ことばと飲み込みの障害について
<認知症>
脳の変性疾患や脳血管障害によって、記憶や思考などの認知機能(記憶力、言語能力、判断力、計算力、遂行力)の低下が起こり、日常生活に支障をきたしている状態です。
脳の変質疾患のアルツハイマー型認知症、脳梗塞や脳出血などが原因の脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあります。
主な症状としてもの忘れがありますが、健常な方でももの忘れはあります。認知症のもの忘れは、「お昼ご飯を食べたことを忘れてしまう」「毎日通う店や家までの道がわからない」など、日常生活に支障をきたすような内容や出来事そのものを忘れてしまいます。
また、自分がもの忘れをしていることも忘れてしまいます。症状の進行度にもよりますが、徘徊などご家族さまが困っていることをご本人に聞いても忘れてしまうため、会話をするだけでは認知症とわからないことがあります。
年相応のもの忘れと認知症の中間にあたる、軽度認知障害という段階があります。軽度認知障害は、認知機能に多少の低下が起こっているものの、日常生活に支障がない状態のことです。
この段階で認知機能の低下に気づき、対策を行うことが認知症予防にはとても大切です。
<失語症>
「医師から、妻は失語症と説明されたけど・・・」「友人が失語症になったそうだ」
失語症という言葉を一度は聞いたことがあるかもしれませんが、いったいどういうものなのでしょうか?
失語症とは定義があり、
「いったん獲得した言語が限局性の大脳病変により障害されるもので、認知症などの全般的な知能低下や失行、失認、構音障害など、他の機能障害によって二次的に生じているものではない症候群」のことを指しています。
つまり、
失語症は「いったん獲得した言語」機能を失ったものであり、言語獲得前の1歳や2歳の赤ちゃんは失語症になりません。もし赤ちゃんがなかなか言葉をしゃべらないなあということであれば、発達障害など先天的な障害の可能性もあります。
また、失語症は「大脳病変により障害される」ものであり、代表的な疾患には、脳梗塞や脳出血などの脳卒中があります。その他にも脳腫瘍や慢性硬膜下出血など症状が少しずつ現れるものもあります。大脳の言語野といわれる部分に損傷を受けると失語症になります。人の言語野は右利きの人は多くが左側の脳にありますが、右側にある人もいます。
よく似ている症状に「認知症」「失行、失認など高次脳機能障害」「構音障害」があります。
認知症は全般的な知能低下が起きるもので、記憶が低下したり、人格変化などがみられることもあり基本的に進行性です。症状の進行を遅らせたりすることはできますが、治ることはありません。失語症はまれに進行する種類のものもありますが、多くは緩やかに改善していきます。
高次脳機能障害にはいろいろなものがありますが、思いどおりに口や手が動かせなくなる失行や、見たものを認識できなくなる失認などにより、言われたことができない、言いたいことが言えない、間違って言ってしまうなどこともあります。よく似ていますが、言語の障害である失語症とは別の症状です。
間違われやすいものに構音障害があります。いわゆる“呂律が回らない”状態で、言葉はうまく話せないことは同じですが、口や舌などの運動機能の障害であり、脳の言語野には問題がありません。聞いたことはすべて理解でき、正しい文法で話すことができますが、発音が不明瞭な状態です。
失語症というのは疾患名ではなく、“似た症状をもつグループ”である「症候群」です。原因となる疾患は先ほども述べましたが、脳卒中や脳腫瘍などさまざまです。言葉がうまく話せないことから病気が見つかることもあります。少しでも言葉がおかしいな、と思ったら受診してご相談ください。
リハビリテーション室では、言語聴覚士が失語症のリハビリを担当いたします。
また、身体障害者手帳(言語)をお持ちの方は、意思疎通支援者の派遣サービスを受けることができます。受診や市役所の手続きなどの際にコミュニケーションでお困りの方は、愛知県ホームページもご覧ください。
<摂食・嚥下障害>
「最近よくむせる」「肺炎を繰り返している」などということはありませんか?
摂食・嚥下障害かもしれません。
正常な体の状態では、食べ物や飲み物は口から食道を通り、胃に流れていきますが、誤って気管から肺へ流れていってしまうことがあります。これを「誤嚥」といいます。
よく似たことばに「誤飲」がありますが、誤飲とは飲み込むつもりでないものを飲み込んでしまったことを指します。電池や洗剤を飲んでしまったり、子どもがピーナッツを吸い込んでしまうなどがあり、その場合は「中毒」や「窒息」の危険が問題になります。
一方、「誤嚥」は意図して飲み込んでもタイミングのずれや反射の遅れなどにより起こります。そして、そのような食べることの障害を「摂食・嚥下障害」といいます。
摂食・嚥下障害の主な原因は、脳卒中などの脳血管障害ですが、癌などで舌や口唇を切除したり、先天性の発達障害などでも起こります。
症状としては、食べたり飲んだ時にむせたり、痰が増えて、熱が出たりします。誤嚥が原因で肺炎になった場合、「誤嚥性肺炎」と診断されます。
対応方法としては、「誤嚥」をしない方法を取ることが一番大切です。具体的には「嚥下造影検査(VF)」などにより、どんな食事、どんな姿勢、どれくらいの一口量で食べれば「誤嚥」をせずに食べられるかを検査します。嚥下造影検査は、普段は外から見えない食道や気管に食べ物が通過する様子をレントゲンで透視するもので、むせの出現しない誤嚥(不顕性誤嚥)を見つけることができます。
リハビリテーション室では、言語聴覚士が中心に、口や舌の運動などの他、呼吸練習や、全身の体力を付ける練習なども行います。食事をやわらかくしたり、水分にとろみをつけることも必要なことがありますので、適切に調整させていただきます。
当院では、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の定める、学会コード分類に合わせた食事を提供できるように心がけています。ご自宅での食事の工夫などご不明な点があれば是非ご相談ください。